映画

『青の炎』のあらすじ・感想〜二宮和也主演・貴志祐介ミステリーが原作・蜷川幸雄監督作品

公開日:2003年3月15日

キャスト

櫛森 秀一:二宮和也

福原 紀子:松浦亜弥

櫛森 友子:秋吉久美子

櫛森 遥香:鈴木杏

曾根 隆司:山本寛斎

石岡 拓也:川村陽介

笈川 伸介:宮田幸輝

大門 剛:木村雅

犬飼:近藤芳正

小中:渡辺哲

美術教師:中山幸

加納 雅志:六平直政

私書箱の男:竹中直人

神崎 慎太郎:唐沢寿明

山本 英司:中村梅雀

スタッフ

監督:蜷川幸雄

脚本:蜷川幸雄、宮脇卓也

原作:貴志祐介「青の炎」(角川文庫刊)

音楽:東儀秀樹

ステディカム:佐光朗

ロードレーサー指導:宮田工業(福田三朗、栗村修)

特殊メイク:メイクアップディメンションズ(江川悦子、神田文裕)

技斗:二家本辰巳

カースタント:アクティブ21

現像:東京現像所

スタジオ:日活撮影所

プロデュース:椿宜和、道祖土健

企画:江川信也

製作:「青の炎」製作委員会(角川書店、アスミック・エース、ジェイ・ストーム、東宝、博報堂、東芝、アップフロントグループ)

あらすじ

神奈川県の湘南に住む高校二年生、櫛森秀一の好きな物。ロードレーサー、母親・友子と妹・遥香、友人・大門と笈川、そして想像力で描くガールフレンドの紀子の裸のスケッチ。どこにでもいる普通の17歳の少年、だった。あいつが現れるまでは。曾根隆司。秀一にとっては義父にあたる男。酒飲みで過去に友子に何度も暴力を振るい、離婚したのにも関わらず、十日程前に突如現れ、櫛森家に住みついた。秀一は当時から曾根を心の底から憎んでいた。曾根と一つ屋根の下で暮らすことも拒み、自宅のガレージを自室にして生活していた。

世間が増幅する少年犯罪事件で恐怖に怯える中、秀一は「俺は他の17歳みたいに感情に任せてナイフで人を刺したりしない」「人を殺すにも想像力が必要だ」と考え、曾根から母親と妹を守る方法を考えていた。秀一は曾根との離婚調停の際に世話になった弁護士事務所を訪れる。曾根を追い出す方法を弁護士の加納に相談するも、法律は秀一たちを守ってくれない。櫛森家の平和な生活を脅かす曾根の存在を一刻も早く消し去るべく、秀一は曾根の殺害を決意、入念な犯罪計画を立てる。

まず、インターネットの裏サイトでシアナミド水溶液という抗酒剤を、松岡四朗という架空の人物になりすまして購入した。秀一のアルバイト先のコンビニに石岡拓也という秀一の友人がやってきた。石岡は家族を殴ったという噂が学校中に広まって、それ以来学校に登校しなくなった。実は石岡はナイフで家族を刺そうとした。それを暴力までに思い留めさせたのが秀一だった。秀一はそのナイフを預かっている。

秀一は紀子との水族館デートで、授業中に描いていた落書きのことを聞かれる。紀子の裸を想像でスケッチしていた秀一は「ただ睫毛の長いライオンがあくびしてる絵を描いた」と嘘をつく。デートから帰ってきた秀一は、遥香と揉めていた曾根に金属バットを振り上げようとする。間一髪、パートから帰ってきた友子がその場を収めるが秀一の怒りは込み上げる。翌日から秀一は完全犯罪成立に向けて一心不乱になる。通学路の海岸通りをタイムを計測しながら全速力でロードレーサーを走らせ、背広を着込み松岡四朗に扮し、私書箱に届いたシアナミド水溶液を注射器を使って曾根の焼酎パックに注入する。電気屋で変圧器やコード、真空管、鍼灸屋ではりを、肉屋で鶏肉などを購入する。
自室で心臓に見立てた鶏肉に購入した物を繋ぎ、曾根を感電死させる為のリハーサルを行う。

そして計画実行の朝。学校近くの人気のない場所にロードレーサーと美術の授業で使う予め用意していた完成済みの絵を隠し、普段通りに学校に登校する。美術の時間になり秀一は、外で描くと言い、未完成の絵を持って教室を去っていく。秀一は学校を抜け出し、人気のない場所に未完の絵を置き、ロードレーサーに跨り、曾根以外誰もいない自宅に戻る。シアナミド水溶液を注入した焼酎を飲み、眠っている曾根に血圧計を繋げ、コードや変圧器を接続。鍼を曾根の足と口の中の銀冠に装着。深呼吸をする秀一、加圧スイッチを入れる。曾根は感電死した。秀一は急いでロードレーサーを走らせ人気のない場所に戻り、殺害道具とロードレーサーを隠し、完成済みの絵を持って学校に戻った。
夕方。秀一は、刑事の山本の事情聴取を受けていた。学校から帰宅したら曾根が倒れており自分で通報したと話す。山本らも曾根は心臓麻痺で死んだと断定、完璧なアリバイもあり、秀一の完全犯罪が成立、秀一はその嬉しさのあまりベッドの中で笑いこける。

しかし突然、石岡が秀一に金を揺すり始める。石岡は秀一が全速力でロードレーサーを走らす姿を目撃、後を付け、殺害道具を発見。石岡は秀一が曾根を殺害したと気付き、警察に通報しない代わりに金を揺すり始めたのだ。秀一は、再び殺害を決意。石岡にコンビニで狂言強盗を提案する。内容はフルフェイスのヘルメットを被った石岡が店員の秀一をナイフで脅す振りをする、秀一はレジの中から金を渡す、石岡は金を持って逃亡、秀一はヘルメットを被っていたから誰かは分からないと証言する、という内容だった。石岡は秀一を信じ、その提案に乗った。実はそれはフェイクで、ナイフを持って揉み合う間に、秀一が隠し持っていたもう一つのナイフで石岡を刺し殺すというものだった。
これもまた成功し、石岡は死んだ。

世間では「友人に殺されかけた」秀一だったが、生徒たちの様々な疑惑と噂により学校での居場所がなくなった。同時に曾根殺しと石岡殺しの犯人を秀一だと疑う山本の存在もあり、秀一は次第に追い詰められていく。秀一の中で起こる変化に気付いた紀子は、辛い時には自分の好きな物を思いついたまま順番にノートに書き出せばいい、そうすることで不思議と心が落ち着くと秀一に教える。秀一は、唯一自分のことを怖い存在だと思わない紀子に人を殺したと打ち明ける。紀子は秀一の哀しみを受け止めるようにキスをした。

山本は秀一のことを聞きに友子の元を訪れた。友子は以前一度だけ秀一が曾根の絵を描いたことがあったと話す。「大きなライオンの口の中に曾根の頭がすっぽり収まっている絵で、ライオンさんの虫歯を抜いてあげるところなんだよって」「あの子が私についた最初の嘘でした」と友子は秀一の中に潜む狂気に気付いていた。 秀一が犯人だと確信した山本は警察署に秀一を呼ぶ。「そろそろ正直に話してくれないか」秀一の答えは「わかりました。明日全てお話しします」「友達にちゃんとお別れを言いたいんです」秀一にある思惑があるとも思わず山本は秀一の願いを聞き入れ、明日再度取り調べる約束を交わす。

翌朝、秀一は友子と遥香と普段と変わりない会話をし、紀子に会いに出かける。学校の美術室で紀子は秀一の30年後の肖像画を描いていた。そして「この地球上で殺されても構わない人間なんて一人もいないと思う。でも、人を殺さなきゃならない事情を抱え込んでしまう人間だって残念ながらいるんだよね」と、秀一を庇うために嘘をつき通すことを約束し、二人は別れた。海岸通りの道を秀一はロードレーサーに乗って走り続ける。前方から大型トラックがやってくると、静かに目を閉じ、トラックに突っ込んだ。

(引用:映画ウォッチ

感想

主人公は櫛森秀一。主人公の超目標は完全犯罪の達成です。動機は母親・友子と妹・遥香を守ること。

曾根隆司との対立は前からありました。秀一は曾根を殺しますが、その動機は家族を守るためであり、曾根の言動も最悪なため、秀一に感情移入することができます。殺人は当然悪行ですが、その動機によっては殺人犯にも感情移入することができることの表れです。

完全犯罪を達成したように見えましたが、友人の石岡拓也に犯行がバレていました。石岡の揺りに対し、秀一は殺害することで対抗します。

その後、刑事の山本に犯行を疑われるようになります。山本は優秀な刑事です。逃げきれないと思った秀一はトラックに突っ込み自殺します。自殺することで逮捕は免れましたが、目標達成の動機である家族を守ることは達成されたのでしょうか。

なんとも後味の悪い結末です。繊細な少年を演じた二宮の演技が、悲しみを増幅させています。この時点で既に二宮は名優です。

視聴方法

・Amazonプライム

・U-NEXT

・ディズニー+

・Netflix

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