公開日:2019年9月6日
キャスト
鈴木小鉄:草彅剛
鈴木京介:新井浩文
鈴木麗奈:MEGUMI
鈴木千尋:中村倫也
鈴木美代子:尾野真千子
鈴木ユズキ:甲田まひる
佐藤登志雄:若葉竜也
冨永月子:長内映里香
山田稔:相島一之
満福寺さん:斉藤暁
鈴木光子:榊原るみ
鈴木一鉄:藤竜也
スタッフ
監督:市井昌秀
脚本:市井昌秀
製作総指揮:木下直哉
プロデューサー:武部由実子、中林千賀子
ラインプロデューサー:傳野貴之
撮影:灰原隆裕
照明:谷本幸治
録音:田中博信
美術装飾:大藤邦康
衣装:渡部祥子
ヘアメイク:永嶋麻子
編集:森下博昭
音楽:スパム春日井
主題歌:フラワーカンパニーズ「西陽」
スクリプター:川野恵美
助監督:吉田和弘
制作担当:高橋輝光
製作:木下グループ
配給:キノフィルムズ
制作プロダクション:キノフィルムズ、ブースタープロジェクト
あらすじ
2008年8月18日午後3時、栃木県
覆面を被った男があけぼの銀行藤岡支店を襲撃しました
その老いた男、鈴木一鉄(強盗犯)はまんまと2000万円を巻き上げると、銀行の外に待機させていた霊柩車で妻・光子(榊原るみ)と共に逃走、そのまま行方をくらませました
マスコミの好奇の目は一鉄夫妻の家族にも向けられ、長男・小鉄(草彅剛)の元にも取材陣が押し寄せていました…
…あれからちょうど10年後の2018年8月18日
鈴木夫妻の行方も、奪われた2000万円の行方も何一つわからないまま月日だけが流れました
この日、既に死亡宣告を受けている夫妻の葬儀をあげるため、各地に散らばっていた夫妻の子供たちが実家に一堂に会しました
折しも日本列島には台風が接近しようとしていました
勤め先をリストラされ、現在無職の小鉄は妻・美代子(尾野真千子)と娘・ユズキ(甲田まひる)を連れて車でやってきました
小鉄は3か月前に交通事故に遭っており、首と頭に包帯を巻いていました
鈴木家の実家はかつては葬儀屋「有限会社鈴木葬儀社」であり、10年前の銀行強盗に使われた霊柩車も鈴木家の所有する物でした
事件当時、一家の子供たちは既に成人して全員が家を出ており、元々一鉄と折り合いの悪かった小鉄は父とまともに会う機会すらありませんでした
葬儀屋の倉庫のシャッターには心ない落書きがされたままでした
やがて実家には長女・麗奈(MEGUMI)と次男で携帯アプリ会社を経営する京介(新井浩文)が戻ってきました
しかし、三男の千尋(中村倫也)は中々顔を見せず、結局千尋不在のまま鈴木家の菩提寺である満福寺の住職(斉藤暁)を招いて葬儀は執り行われました
葬儀を終えた小鉄たちがこれから遺産分与の話をしようとしていたその時、一人のチャラい男が現れました
その男は麗奈の彼氏である佐藤登志雄(若葉竜也)であり、鈴木家の葬儀の話を聞きつけてやってきたのです
登志雄は一鉄と光子の棺を開けてしまい、中が空っぽであることに驚きました
登志雄は小鉄や京介から一鉄が犯した銀行強盗の話を聞き、一家は事件のせいで世間から冷たい視線を浴び続けてきたこと、麗奈は事件が元で前夫と離婚し現在はバツイチであることを知りました
その後、麗奈と登志雄は家の倉庫で激しく愛し合いました
鈴木家は千尋が現れないまま、財産分与の話を始めました
両親の遺した遺産はこの実家の建物と土地くらいで、家は築年数が経過していることもあって価値はほとんどなく、金になるのはこの土地くらいなものでした
その土地も犯罪者が住んでいた土地とあって安く買いたたかれるであろうとして、どうにか800万円程度にはなりそうでした
遺産は兄弟で均等に分けるかと思いきや、突然小鉄は自分が多くもらう権利があると言い出しました
他の兄弟が全員大学を出ているなか、小鉄だけは高卒であり、自分は金がかかっていないと言い訳しだしたのです
呆れた京介は小鉄への当てつけのようにこの家も土地も売りたくないと反発、麗奈も結婚相談所に登録したから金が欲しいと言い出し、登志雄を驚かせました
すると、小鉄は今度は「遺産は全部俺がいただく」と反撃しました
かつて俳優を志し、一鉄と喧嘩の末に家を飛び出した小鉄でしたが、結局俳優としては目が出ることはなく、職も失い事故にまで遭う羽目になったのです
小鉄は同情を買おうとしましたが不発に終わり、ヤケになって頭と首の包帯を外しました
小鉄は既に怪我は完治しており、わざと同情を買うためにまだ怪我が治っていない様に装っていたのです
一家はなぜこの日は友引にも関わらず葬儀の日になったのかと思い始め、小鉄が葬儀の手配をしたのではないかと思いましたが、小鉄は否定しました
その時、鈴木家に千尋が姿を現しました
実は葬式の手配をしたのは千尋であり、一鉄が起こした未解決事件が10年を経てどんな展開となっているのかをYouTubeを通じて世間に知らしめようと企画したものでした
家の至る所にはカメラが設置されており、小鉄たちのやり取りは全てYouTubeで生配信されていたのです
千尋が動画配信で金を稼ごうとしていることを知った小鉄は、カメラの前で謎のダンスを始めました
その様子をあけぼの銀行に勤める山田稔(相島一之)、そして謎の女・冨永月子(長内映里香)が見ていました
小鉄の怪しい踊りもあり、千尋の動画視聴者はうなぎ登りに上がっていきました
そんな時、倉庫のカメラで登志雄が何かしているのを見た小鉄たちが見に行くと、登志雄は倉庫にあった官能小説を読み耽っていたところでした
小鉄たちは倉庫の中から、あらゆる物の名前が沢山書かれた張り紙を見つけました
実は一家の母である光子は認知症を患っており、一鉄は彼女がものを忘れないように張り紙を張っていたのです
祖母も認知症を患っていた登志雄も一鉄に共感を覚えました
一家は一鉄が銀行強盗を働いたのは光子の治療費なのではと考えましたが、小鉄だけは「どうでもいい」と言い出し、一家はひと悶着を起こしました
そこにネット中継を見た山田が訪れ、一鉄の件はまだ時効を迎えていないので、小鉄たちが一鉄の遺産を相続した場合は負債を抱えることになると警告してきました
10年前の事件後、あけぼの銀行は一鉄を相手取り訴訟を起こしたのですが、鈴木家は誰もいなかったため誰も郵便物を受け取る者がおらず、あけぼの銀行は公示送達という手を使って再び訴訟を起こし、この請求が認められたのが2014年7月16日のことでした
すなわち、一鉄の時効は2014年から10年後であり、時効前に相続した場合は一鉄が奪った2000万円の負債を背負うことになるのです
仮に土地を売って800万円を捻出しても差し引き1200万円を負債として背負う計算でした
事件当時は支店長だった山田は事件の責任を負わされてヒラの案内係に降格されており、山田は一鉄のせいで人生を狂わされたと吐き捨てて去っていきました
鈴木家は遺産相続どころかまさかの借金を背負わされることに落胆を隠せませんでした
その頃、家の中を見て回っていたユズキは小鉄が書いた映画ノートを見つけました
京介、麗奈、千尋、登志雄は美代子とユズキの会話から、小鉄がとにかく金に強い執着心を見せるのは自分のためではなくユズキのためだったことを知り、納得しました
ユズキはコンクールに優勝するほどのピアノの腕前を持っており、ウィーンに留学するのが夢のユズキのために小鉄は何としても金を稼ごうとしたのですが逆に失職してしまったのです
その頃、外に出ていた小鉄は近くの神社の賽銭箱の横に落ちた100円玉を何とか拾おうとしていました
夜になり、雨はますます強さを増していました
京介は仕事を理由に戻ることになり、一家はこの実家で一晩を過ごそうとしました
その時、帰ったはずの京介が冨永を連れて戻ってきました
ネット中継を見てやってきた冨永は、一鉄が銀行強盗した責任は自分にあると衝撃の告白をしました
それは10年前、母子家庭に育った冨永は母が介護が必要な体となり、金を稼ぐために振り込め詐欺に手を染めてしまったのです
冨永の詐欺の最初のターゲットとなったのが他ならぬ一鉄であり、冨永は小鉄が人身事故を起こしたので2000万円が必要だと嘘の電話を入れたのです
光子の介護に疲れ果てていた一鉄はまんまと騙されて銀行強盗に及んだのです
しかし、事件があまりにも大々的に報じられたことに恐れをなした冨永は詐欺から足を洗い、それからは堅気として地道に働いていたのです
当時一鉄と不仲だった小鉄は、自分が免許を取ったことを一鉄は知らないはずだと考えていましたが、実はまだ幼かったユズキがこっそりと一鉄に教えていたのです
そんな時、一家は小鉄が売れない俳優だった頃に出演していた映画のビデオテープを発見しました
これまでは頑なに父の愛情を受け入れようとしなかった小鉄も思わず涙を流し、一家はこれを機に気持ちがひとつにまとまりました
いよいよ台風はこの実家周辺に到達しました
それでも鈴木家は両親の行方を捜しに行くことを決意、かつて家族全員で行く予定だったものの台風で中止になり、その後廃業したキャンプ場ならば何か手掛かりがあるのではと考えました
しかし、小鉄が乗ってきたのは軽自動車であり、とても一家全員が乗れるものではありませんでした
そこで一家は葬儀をあげてもらった満福寺の住職(斉藤暁)からミニバンを借り、嵐の中をキャンプ場跡へと車を走らせました
実は、このキャンプ場こそが一鉄と光子の最期の地でした
あの日、銀行強盗を終えた一鉄は公衆電話で冨永に電話をかけたものの、途中で光子は発作を起こしたために電話を放り出して彼女の元に駆け寄りました
結局光子はそのまま息を引き取り、一鉄が彼女の遺体と共にこのキャンプ場に逃れたのです
光子の遺体を抱きかかえたまま川辺を歩いていた一鉄は突然の雨に見舞われ、転倒して頭を強打して息絶えたのでした
小鉄たちは川縁に寄り添ったまま眠る両親の白骨化した遺体を見つけました
その直後、両親の遺体は増水した川の流れに流され、小鉄たちは懸命にその後を追いました
やがて両親の遺体は海へと流れていき、それを見送った小鉄たちの顔には何だか笑顔が浮かんできました
それから小鉄たちは両親たちが眠る海を背に記念撮影を行い、まるで子供の頃に戻ったかのように浜辺ではしゃいでいました
(引用:映画ウォッチ)
感想
主人公は小鉄
超目標は遺産を相続すること
初めは金に執着した男のように見える小鉄ですが、娘・ユズキの留学資金のためであることが後からわかります
これにより怪我が嘘であったことも受け入れられます
娘のためなら嘘をついても許されるということでしょうか
これは小鉄のためを思って強盗をした一徹しかり、母親のために詐欺に加担した冨永についても言えることです
人間は、誰かのためであれば、悪いことを行なっている人にも感情移入できるということでしょう
小鉄は遺産相続のために兄弟たちと対立します
金のためなら、YouTubeで晒し者になることも厭いません
これらがすべて娘への愛情であるとわかったとき、観客は一気に小鉄に感情移入できます
一致団結した家族が両親を探しに家を出るシーンは秀逸です
めちゃくちゃかっこよくて面白い
昔撮ったキャンプ場の写真が活きてきます
海に行ったことのなかった彼らの母親が、白骨化して一徹と共に初めて海に行く
とてもよく作り込まれた家族ドラマです
視聴方法
・Amazonプライム
・U-NEXT